WKB 近似法
ウェンツェル-クラマース-ブリュアン (WKB) 近似法は、量子力学においてシュレーディンガー方程式を単一の粒子に対して解くための強力な手法です。この近似法は、ポテンシャルがゆっくりと変化するシステム、例えば量子トンネル効果や量子システムの半古典解析において特に有用です。
基本概念
まず、一次元の時間に依存しないシュレーディンガー方程式を考えます:
-ħ²/2m * (d²ψ/dx²) + V(x)ψ(x) = Eψ(x)
ここで、ħ
は縮退したプランク定数、m
は粒子の質量、ψ(x)
は波動関数、V(x)
はポテンシャルエネルギー、E
は粒子の全エネルギーです。
WKB 近似法はポテンシャルV(x)
が空間的にゆっくりと変化する場合に適用されます。基本的な考え方は、波動関数ψ(x)
を、粒子の古典的運動に関連するパラメータの積分を指数に持つ指数関数として表現することです。
語源
波動関数の形は以下のように仮定します:
ψ(x) = A(x) exp(i S(x) / ħ)
ここで、A(x)
は振幅、S(x)
は作用です。この形をシュレーディンガー方程式に代入し、WKB 近似を適用すると、S(x)
に対する以下の式が得られます:
dS(x)/dx = ±√(2m(E - V(x)))
この式はS(x)
が古典的運動に関連していることを示しています。積分すると:
S(x) = ∫ ±√(2m(E - V(x))) dx
領域とリンカ
WKB 近似を使用するには、ポテンシャルの異なる領域での波動関数の挙動を考慮することが重要です:
- 古典的に許可された領域 (
E > V(x)
): この領域では、粒子が存在することができます。波動関数の形は以下の通りです。ψ(x) = A(x) exp(±i ∫ √(2m(E - V(x))) dx / ħ)
- 古典的に禁じられた領域 (
E < V(x)
): 粒子の存在は量子力学によってのみ支持されます (トンネル効果のように)。波動関数は以下の通りです。ψ(x) = B(x) exp(± ∫ √(2m(V(x) - E)) dx / ħ)
転回点
転換点はE = V(x)
のときに現れます。転換点では、WKB 近似が成立しません。なぜなら積分の中のパラメータがゼロになるためです。我々は両サイドの解を慎重に一致させる必要があります。単純調和振動子や量子井戸のような場合を考えてみてください。ここで転換点の概念が関連してきます。
上の図では、ポテンシャル曲線とエネルギーE
を示す水平線が見えます。この線が曲線と交差する点が転換点です。
接続公式
接続公式は転換点付近の波動関数の挙動を表現します。これらは、古典的に許可された領域と禁止された領域での解をスムーズに接続することを保証します。これはトンネル確率のような現象を計算する際に重要です。通常、転換点付近の解を扱うためにエアリー関数を使用します。
例:調和振動子
例えば、量子調和振動子を考えてみましょう。そのポテンシャルは以下の通りです:
V(x) = 1/2 m ω² x²
通常、転換点はポテンシャルエネルギーが全エネルギーに等しいときに位置します:
E = 1/2 m ω² x²
WKB 近似を使って、異なる領域を推定し、量子力学の規則に従ってそれらを合わせます。
例:矩形ポテンシャル障壁
WKB 近似のもう一つの重要な応用は、矩形ポテンシャル障壁に見られるような量子トンネル効果を理解することです:
V(x) = { 0 if x < 0, V₀ if 0 ≤ x ≤ a, 0 if x > a }
バリアに向かって移動するエネルギーE
の粒子についてE < V₀
の場合、古典物理学では経路が予測されませんが、量子力学ではトンネルが許可されます。ここではバリア内部での波動関数の指数関数的減衰を理解することが重要です。
応用と限界
WKB 近似法は量子力学で広く使用されており、半古典的アプローチを提供し、複雑な問題を簡素化します。原子物理学、量子化学、さらには天体物理学における重力波現象の研究にも使用されます。
しかしながら、この近似には限界があります。転換点付近では失敗し、急激なポテンシャルの変化には対応できません。非常に低いエネルギーや鋭い特徴を持つポテンシャルを扱う強い量子効果の場合、より正確な方法が望ましいです。
結論
WKB 近似は、古典力学と波動的な量子力学の性質との間をつなぐ、高度な量子力学のツールキットにおいて多用途なツールです。ゆっくりと変化する確率における量子システムの理解を簡素化する一方で、転換点周辺や任意の近似に内在する限界を考慮する必要があります。